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言ってやりたいこと  2004.11.23

 昨日は、エゴグラムを紹介しました。
 そんなにしつこくこだわらなくてもいいのに、何度も何度も紹介しているのには、理由があるようです。

 今日は、ちょっとその辺について、考えてみました。

 実は、このエゴグラム、私がはじめて知ったのは、もう9年も前のことになります。

 自分がわかる心理テスト
 芦原 睦 著 桂 戴作 監修
(講談社 BLUE BACKSシリーズ)

 この本がその発端です。

  ▽  △  ▽

 若さゆえ(爆)自分探しというか・・
 当時の私は、今考えるとどうでもいいようなことに、たくさん思い悩んでいたのです。そこで、とにかく心理学とか心理分析的なことが書かれた本を片っ端から読んでた時期があったのです。
 ちょうど、震災直後くらいでしたから、きっと、精神的にもかなり不安定だったのでしょう。

 この本、タイトルだけを見ると、巷にあふれる、チェック形式の心理テスト本のように見えますが、実は、交流分析に基づく対人関係の解説書です。

 ここで、交流分析について、まず説明しておきましょう。

 交流分析とは、人と人との交流や、対人関係における行動を読み解くための理論体系です。
 精神分析にヒントを得て、1957年にアメリカの精神科医によって創られたもので、そのため、読み解くだけでなく、これに基づいて行われる治療技法も含みます。

 よって、本書では、冒頭ではチェック形式の簡単な心理テストで始まりますが、巻末ではなんと、心療内科という診療科目の紹介で締めくくられています。
 今考えると、一般的な心理テスト本に心療内科の紹介が含まれてたりするのは、当たり前のように思われますが、この著書が発行されたのは、今から12年前、当時は精神科や神経科の敷居も高く、決してメジャーなものではありませんでしたから、当時の僕は心底面食らったものです。(笑)

 つまり、心の病予備軍や、気づかず病に両足突っ込んでる人への啓発本でもあったわけですね。

  ▽  △  ▽

 話を戻しましょう。
 たまたま、エゴグラムのことをふと思い出して、昨日紹介したものの、どうしてここまでこだわるのだろうかと思った私は、その発端となったこの本をもう一度読み返してみたんです。

 そしたら、当時はまったく気づかず読み下してた、今なら痛いほどよくわかることが、たくさん書かれていて、びっくりしました。
 ほとんど内容なんて忘れているんですが、今の私が、いつも心におきながら生きてる、そんな内容が本の中にちりばめられていました。

 実は、このサイト自体が、人とのかかわり方についてをテーマのひとつにしているのですが、もしかすると、今こんなことを考えるようになったきっかけ自体が、この本じゃないかと思えるくらいなのです。

  ▽  △  ▽

 この現代は、過去の因習的な構造も発想も次々打ち壊され、社会から押し付けられた一定の役割に安定することが出来なくなっています。
 もちろんそれは、私たちが自由を勝ち取る過程の中で手に入れてきたものではあるのですが、同時に、社会構造にさえ組み入れられていれば、考えることもなくその役割で居る事だけは出来るという、最低限の保障を失うことでもあります。

 身分や立場を考えることを奪われている代わりに、その身分は保証されていた時代から、考えることは出来るけれども、どんな身分すらまったく保証されなくなったという、皮肉な状態になってるわけです。

 過去あった古典的地域コミュニティにしても、都市部ではほぼ完全に崩壊していますし、地方においてもかなりゆがんだ形態へと変化しているのではないかと思います。

 さらに、努力すれば報われるとか、正しく生きれば報われるなどということも、必ずしも成り立ちませんし、いやむしろ、そうでない場面のほうがずっと多くなってきてるといってもいい状態になってきています。
 つまり、誠実さや勤勉さすらも、昨今では重要視されなくなってきているわけです。

 これは、今の世の中が、超個人主義的になってしまって、めいめいがバラバラの発想や行動をすることができるようになってしまって、かえって生きにくい世の中になってしまっているのでしょう。
 それぞれの一番都合のよい形ばかりを模索していては、非生産的でぎすぎすした生き方になるのは当然ですから。

 人間、何かを拠り所にし、規範として生きていかないと、世の中というのはどれほど心細く、心もとない世界でしょう。規範が共有されていないと、どれほど恐ろしいことでしょう。

 そんな状態になってしまっているのが、この現代なのだと、私は思います。

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 今日紹介した、この著作では、交流分析からアドラー心理学へと話を進め、一貫して、他者との交流の中から自己というものを見つめ、いかに安定した人格と生き方を得るかについて、解いていきます。
 そしてこれは、決して心を病んだ人のためのものではなく、ごく普通にこの世の中で生きている人のためのものとして、書かれているのです。 

 この世の中がどうしても生き難い理由、それは、この「交流」をあまりにも皆が、いや、世間が軽視しすぎているからじゃないかと思うのです。

 宗教からも因習からも、私たちは解き放たれてしまいました。
 しかしそれは、信仰や慣例という、外的な規範も捨て去ったということなのです。

 外的規範なしに自らを律して生きていける人が、この世にどれくらいいるんでしょう。少なくとも僕は、そんなに強い人間ではありません。
 ならば、これらに代わる、新たな規範を、せめて自らのうちに見出さないと、安定した生活を望むべくもありません。

 そんな意味で、僕は、人と人との関係について、常に思いをめぐらし、言葉を積み重ねているのです。

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 僕は今、この本を初めて手に取った瞬間の、過去の自分にいってやりたいことが山ほどあります。でも、その思いは決してかなうことはありません。
 それは、交流分析の中ではっきり言われている言葉

 「変えられるのは現在の自分だけ。過去も他人も変えられない。」

 この一言に尽きるからなのだろうと、今感じています。
 
 交流分析は、「優しい対人関係の科学」とも呼ばれています。
 興味がある方は、ぜひその世界を覗いてみてくださいね。